釧路川バイクラフティング #1

前記事「釧路川バイクラフティング#0」からの続き

釧路川は源流・中流・湿原の
3セクション

釧路川は屈斜路湖から流れ出している。全長は約100km。大きく3つのセクションに分けられる。

1つ目は源流域。森林セクション。透き通った水。川幅は狭く、両脇からは良く茂った木が張り出している。さながら緑のトンネルだ。とはいえ細かいS字カーブが続き水上水中に倒木が多いため気が抜けない。

2つめは中流域。市街地セクション。弟子屈町と標茶町の市街地周辺域。護岸ブロックなど人工構造物が多い。自然味が少ない上に危険個所も多い。

3つ目は湿原域。天然記念物セクション。川幅は広く流れは緩やか。周辺に高い樹木は少なくなりアシ原が広がる。野生動物に最も多く出会える稀有な環境に感動を禁じ得ない。

このような3つの流域をパックラフトと自転車を用いて楽しみ、スタート地点である屈斜路湖まで自転車でキャンプをしながら戻る。それが今回のバイクラフティング旅だ。

国内で味わえる身近な冒険。このブログがきっかけで「やってみた」という人が現れると嬉しいです。

DAY1は移動日。
札幌から釧路を経て屈斜路湖へ

札幌を出発しスタート地点である屈斜路湖の和琴半島を目指す。釧路市街で食料を調達し、川下りのゴール地点に設定した岩保木水門を確認した後に屈斜路湖に向かうことにした。

札幌→岩保木水門→屈斜路湖の移動距離は390km。Googleマップによると5時間45分。移動に1日を要するのは止む無し。

道外勢ならば、空路で釧路空港に入り屈斜路湖まで自転車移動をした後に川旅スタート。川旅ゴール後は自転車で釧路市街まで移動して1泊。身支度を整えてから空路で帰路につくという動きが良いのではないだろうか。

ゴール地点の岩保木水門。ちなみに読み方は「いわぼっきすいもん」。下ネタはやめて欲しい。

多くのカヌーツアーのゴールになっているようで、ちょうど数艇のカヌーが入ってきた。お客さんは一様に満足げな顔をしている。

ガイドたちは対照的だ。坦々と片付けを始めカヌーを車に積み込んでいく。彼らにとっては日常であり生業なのだ。

弟子屈ラーメンの弟子屈総本店で食事。札幌市内にも数店舗あるけれど食べたことがなかった。ご当地物は率先して楽しみたい。

やっとスタート地点の屈斜路湖和琴半島に着いた。空気がひんやりとしている。星が綺麗。

ロングドライブで凝り固まった体をほぐすべく野湯「和琴露天風呂」に入る。

湖側から丸見えなのは風情としてカウントできるが、背後の散策路から丸見えなのはやや照れる。

人がいたらやめようと思っていたけれど遅い時間だったので貸し切り。スッポンポンになって飛び込んだ。満点の星空。解放感が凄い。

ブランケットを羽織り、公共駐車場のベンチに酒とツマミを並べてひとり宴会を始めた。

翌日から始まる釧路川ダウンリバーに想いを巡らせる。野田さんの本を読んで以来長年の憧れだった釧路川についに来たのだ。

正直、不安はある。

釧路川を漕ぐのは初めて。重たい自転車と荷物を積んだ状態で障害物を交わし瀬を越えていけるのだろうか。しかも単独だ。正直不安はある。けれどやらずにはいられない。

この旅を終えたら「やっときゃ人生100点満点」リストにひとつチェックを入れられる。人生最後の日、高らかに笑って死ぬためにはこの冒険が必要だ。

長くなったのでDAY2編に続くことにしよう。
野田知佑さんの『日本の川を旅する カヌー単独行』から大好きな一節を引用して終わりにする。

川旅は「男の世界」である。

自分の腕を信頼して
毎日何度か危険を冒し
少々シンドクて、孤独で、
いつも野の風と光の中で生き、
絶えず少年のように胸をときめかせ、
海賊のように自由で……

つまり、ここには男の望むものがすべてある。

釧路川バイクラフティング #0

バイクラフティングとは

パックラフトという空気で膨らませるボートと自転車(バイク)を組み合わせた、アウトドアでの遊び方。陸上では自転車にパックラフトを積み、水上では反対にパックラフトに自転車を積んで移動します。

今回の旅を例に挙げると、公共駐車場に車を置いたのち自転車移動で旅がスタートしました。パックラフトを積んだ自転車を走らせて湖畔のポイントまで陸上を移動。ポイントに到着したらパックラフトを膨らませて自転車を積み水上移動にチェンジ!そこからは湖と川を進む旅が始まります。

水上移動の終着点に着いたらパックラフトを畳んで自転車に積んで自転車移動にチェンジ!旅の最終ゴール地点、車を置いた公共駐車場まで自転車で戻ります。

最大の魅力は自由さ

計画に縛られない自由

辿り着かないといけない場所と時間が決まっているだけで旅や冒険が窮屈に感じてしまうのは僕だけでしょうか?天候、体調、気分次第でその日に一番気持ちいいことをしたい。

例えば今回の釧路川の中流域は波消しブロックや護岸されている個所が多く自然味が薄いため、自転車移動にチェンジ。丹頂鶴が佇む川沿いの道を胸躍らせながらライドしました。

またパックラフトでの川旅の途中でも岸に上がって自転車に乗れば近くの町に出られます。「冷えたビールを飲みたい」「風呂に入りたい」という欲望を全て叶えて、自由でわがままな旅ができました。

冒険をひとりで完結できる自由

水が流れていない湖でのパックラフト遊びなら漕ぎ始めたスタート地点に漕ぎ戻ることができますが、川は流れがあるのでスタート地点に漕ぎ戻ることができません。

そのため川下りは2台以上の車で行動し「回送」するのが一般的です。スタート地点にパックラフト等の全ての川下り装備を置いた後、下流のゴール地点まで車を置きに行きます。そして他の車に皆で乗り込んで再度上流のスタート地点まで戻り、やっと川下りをスタートできるんです。

自転車を積んだバイクラフティングだとこの回送をする必要がないので、誰にも頼ることなく冒険を完結できます。忙しい大人同士がスケジュールを調整する必要はありません。行きたくなったら即行動。誰かと約束をしたわけでもないので止めたくなったら止めてもいい。この自由さがバイクラフティングの魅力です。

使用したパックラフト

MRS “Microraft”(L)

お世話になっているPackraft Hokkaidoさんや秀岳荘さんに相談をしてこのモデルに決めました。
相談時の条件は次の4つ。

  1. 自転車を積めること
  2. 激流(ホワイトウォーター)での性能は求めていないこと
  3. 収納サイズが大きくないこと
  4. 重くないこと

以上の条件を告げたところ薦められたのがこのモデルでした。全く下調べをしていない状態でしたが、MRSは価格が手頃でモノも良いということは知っていたので、秀岳荘白石店さんで実物を見てすぐに決めました。

実際にバイクラフティングで使ってみてとても気に入っています。丈夫さと軽さ、機動性と安定性、使用時のサイズと畳んだ時のサイズなど、バランスがちょうど良いと感じます。

使用した自転車

SURLY “BRIDGE CLUB”

まだ自転車に興味がなかった頃、Instagramのタイムラインに流れてきた渋い自転車と車体に貼られたアミガサタケのステッカーに目が釘付けになりました。アミガサタケはブッシュクラフト好きにとって親しみ深いキノコでして、「アミガサタケをステッカーにして貼るなんてクールな奴がやってるメーカーに違いない」「自転車を買うときはコレを買う」と当時の僕は心に決めました。

その写真をインスタにアップしたのは今最も親しくしていただいているショップのひとつであるSAM’S BIKEさんであり、その自転車がSURLY “BRIDGE CLUB”でした。

嬉しいご縁もあってSAM’S BIKEさんで購入することになったのですが、この時も他のモデルを下調べすることもなく「アミガサタケ」だけで決めてしまいました笑 これだけ言うとバカっぽいですが次の3点だけは店長のサライさんにきちんと確認していました。

  1. 山に分け入って遊べる事
  2. 荷物を積んでキャンプに行けること
  3. 将来的にパックラフトに積みたい事

結果的にSURLYのBRIDGE CLUBは僕に最適な自転車でした。結局、道具選びで最も大切なことって「自分はその道具で何をしたいか」を明確にすることなんですよね。何を選ぶかはプロに相談すればいい。

必要な技術と事前準備

舐めちゃダメだけどビビり過ぎてちゃ何もできない(これ人生の真理ですよね)。とは言え、最悪死んじゃうわけなので準備は必要。

パックラフトを買ったのは今年の夏。リバーカヤックも持っていましたが川下り経験はほんの数回。川下りに関しては初心者です。ファルトボート(折り畳み式のカヤック)で湖を漕いだ経験はそれなりにあるのですが、川は別の遊びだと思っています。

まず荷物を積んでいない状態のパックラフトでダウンリバーをして、危険を避けるための動きを中心に練習をしました。川の源流部は流れが蛇行している上に張り出した倒木、水中に沈んでいる倒木、ストレーナー(危険な障害物)が多いためです。

次に自転車を積んだ状態でも同様の動きを出来るように練習をしました。自分のカラダひとつで漕ぐのと重い自転車を積んだ状態で漕ぐのとでは大きく違います。機敏さが失われますし、重心が高くなるので左右に揺れやすくなります。とは言え、やりたかったバイクラフティングが出来ていることが嬉しくて、釧路川への情熱は高まるばかり…!!

当初の考えでは自転車に加えてキャンプ装備も積み込んだ「フル装備」の状態で練習をするつもりだったのですが時間を捻出できず…。

そんなこんなをしていると思いがけず数日間の休みを取れそうなタイミングができ、高まった情熱をもう抑えることが出来なくなってしまいました。

やるっきゃねえ!(続く)