釧路川バイクラフティング #0

バイクラフティングとは

パックラフトという空気で膨らませるボートと自転車(バイク)を組み合わせた、アウトドアでの遊び方。陸上では自転車にパックラフトを積み、水上では反対にパックラフトに自転車を積んで移動します。

今回の旅を例に挙げると、公共駐車場に車を置いたのち自転車移動で旅がスタートしました。パックラフトを積んだ自転車を走らせて湖畔のポイントまで陸上を移動。ポイントに到着したらパックラフトを膨らませて自転車を積み水上移動にチェンジ!そこからは湖と川を進む旅が始まります。

水上移動の終着点に着いたらパックラフトを畳んで自転車に積んで自転車移動にチェンジ!旅の最終ゴール地点、車を置いた公共駐車場まで自転車で戻ります。

最大の魅力は自由さ

計画に縛られない自由

辿り着かないといけない場所と時間が決まっているだけで旅や冒険が窮屈に感じてしまうのは僕だけでしょうか?天候、体調、気分次第でその日に一番気持ちいいことをしたい。

例えば今回の釧路川の中流域は波消しブロックや護岸されている個所が多く自然味が薄いため、自転車移動にチェンジ。丹頂鶴が佇む川沿いの道を胸躍らせながらライドしました。

またパックラフトでの川旅の途中でも岸に上がって自転車に乗れば近くの町に出られます。「冷えたビールを飲みたい」「風呂に入りたい」という欲望を全て叶えて、自由でわがままな旅ができました。

冒険をひとりで完結できる自由

水が流れていない湖でのパックラフト遊びなら漕ぎ始めたスタート地点に漕ぎ戻ることができますが、川は流れがあるのでスタート地点に漕ぎ戻ることができません。

そのため川下りは2台以上の車で行動し「回送」するのが一般的です。スタート地点にパックラフト等の全ての川下り装備を置いた後、下流のゴール地点まで車を置きに行きます。そして他の車に皆で乗り込んで再度上流のスタート地点まで戻り、やっと川下りをスタートできるんです。

自転車を積んだバイクラフティングだとこの回送をする必要がないので、誰にも頼ることなく冒険を完結できます。忙しい大人同士がスケジュールを調整する必要はありません。行きたくなったら即行動。誰かと約束をしたわけでもないので止めたくなったら止めてもいい。この自由さがバイクラフティングの魅力です。

使用したパックラフト

MRS “Microraft”(L)

お世話になっているPackraft Hokkaidoさんや秀岳荘さんに相談をしてこのモデルに決めました。
相談時の条件は次の4つ。

  1. 自転車を積めること
  2. 激流(ホワイトウォーター)での性能は求めていないこと
  3. 収納サイズが大きくないこと
  4. 重くないこと

以上の条件を告げたところ薦められたのがこのモデルでした。全く下調べをしていない状態でしたが、MRSは価格が手頃でモノも良いということは知っていたので、秀岳荘白石店さんで実物を見てすぐに決めました。

実際にバイクラフティングで使ってみてとても気に入っています。丈夫さと軽さ、機動性と安定性、使用時のサイズと畳んだ時のサイズなど、バランスがちょうど良いと感じます。

使用した自転車

SURLY “BRIDGE CLUB”

まだ自転車に興味がなかった頃、Instagramのタイムラインに流れてきた渋い自転車と車体に貼られたアミガサタケのステッカーに目が釘付けになりました。アミガサタケはブッシュクラフト好きにとって親しみ深いキノコでして、「アミガサタケをステッカーにして貼るなんてクールな奴がやってるメーカーに違いない」「自転車を買うときはコレを買う」と当時の僕は心に決めました。

その写真をインスタにアップしたのは今最も親しくしていただいているショップのひとつであるSAM’S BIKEさんであり、その自転車がSURLY “BRIDGE CLUB”でした。

嬉しいご縁もあってSAM’S BIKEさんで購入することになったのですが、この時も他のモデルを下調べすることもなく「アミガサタケ」だけで決めてしまいました笑 これだけ言うとバカっぽいですが次の3点だけは店長のサライさんにきちんと確認していました。

  1. 山に分け入って遊べる事
  2. 荷物を積んでキャンプに行けること
  3. 将来的にパックラフトに積みたい事

結果的にSURLYのBRIDGE CLUBは僕に最適な自転車でした。結局、道具選びで最も大切なことって「自分はその道具で何をしたいか」を明確にすることなんですよね。何を選ぶかはプロに相談すればいい。

必要な技術と事前準備

舐めちゃダメだけどビビり過ぎてちゃ何もできない(これ人生の真理ですよね)。とは言え、最悪死んじゃうわけなので準備は必要。

パックラフトを買ったのは今年の夏。リバーカヤックも持っていましたが川下り経験はほんの数回。川下りに関しては初心者です。ファルトボート(折り畳み式のカヤック)で湖を漕いだ経験はそれなりにあるのですが、川は別の遊びだと思っています。

まず荷物を積んでいない状態のパックラフトでダウンリバーをして、危険を避けるための動きを中心に練習をしました。川の源流部は流れが蛇行している上に張り出した倒木、水中に沈んでいる倒木、ストレーナー(危険な障害物)が多いためです。

次に自転車を積んだ状態でも同様の動きを出来るように練習をしました。自分のカラダひとつで漕ぐのと重い自転車を積んだ状態で漕ぐのとでは大きく違います。機敏さが失われますし、重心が高くなるので左右に揺れやすくなります。とは言え、やりたかったバイクラフティングが出来ていることが嬉しくて、釧路川への情熱は高まるばかり…!!

当初の考えでは自転車に加えてキャンプ装備も積み込んだ「フル装備」の状態で練習をするつもりだったのですが時間を捻出できず…。

そんなこんなをしていると思いがけず数日間の休みを取れそうなタイミングができ、高まった情熱をもう抑えることが出来なくなってしまいました。

やるっきゃねえ!(DAY1に続く

野田知佑さん

先日の釧路川バイクラフティングのことをブログに書き記すにあたり、僕が野田知佑さんの本から受けた影響について触れておかないと片手落ちの様な気がした。

昨年のユーコン川カヌー旅もそうだ。アウトドアマンとしての僕にとって野田さんの影響は大きい。大きいなんて言葉に納まりきらない。

誰に向けて何を書けばいいのか。納得がいかずに何度も書き直した。会ったこともない野田さんはこの文章を読んでどう思うだろう。そうか。お礼の気持ちを込めてみよう。

カヌーイスト野田知佑の本の世界に背中を押されて、フジタカヌーの折り畳み式のカヤックを買った。夏の暑い日、初漕ぎは息子と2人だった。11歳の息子と一緒にぎこちなく漕ぎ出した。水に浮かんでスーッと進んだ時の感動は忘れられない。徒歩では行けないところ、誰もいないところにいける自由さに言い知れぬ喜びを感じた。

手垢にまみれていない自然がそこにはあった。

(岸に上がって息子と一緒にカップラーメンを食べたなー)

野田さんの本に何度も出てくるユーコン川は憧れになった。野田さんの様に自由を感じながらカヌーで下ることが夢になった。釧路川もそうだ。ユーコン川を下ることは「やらなきゃ死ぬとき後悔する」リストに、釧路川は「やっときゃ人生100点満点」リストに書き加えられた。

ユーコン川でも釧路川でも野田さんの存在を感じていた。不思議なことに、どちらの川でも野田さんに所縁のある人に出会った。ユーコン川で出会った現地のガイドから「君はトモを知っているか?」と聞かれた時には胸が震えた。釧路川のゴール地点で出会ったベテランガイドの平塚さんもそうだ。「君は面白いことをするなー!」とえらく感心してくださった。聞くと、野田さんと一緒にユーコンに行ったことがある程、親しい方だった。野田さんにも褒められているような気がして嬉しかった。

野田さんの本が、言葉が、背中を押してくれたから今の僕がある。おこがましいけれど僕もそうなりたい。野郎の背中はグイっと力強く、女の子の背中はそーっと優しく押してあげたい。そうなれる様に、この先の人生を歩みたいと思う。

野田さん、ありがとうございます。会ってお話してみたかったです。会いたい人には会っておかなきゃだめだな。